目的に応じて不動産の価格は異なる
2019年6月6日
みなさんは不動産の価格に関する「一物四価」という言葉を聞いたことがありますか。不動産は、目的に応じて、目安となる価格が複数存します。具体的には、実勢価格、公示価格、相続税評価額、固定資産税評価額をいいます。このうち、公示価格(同様な評価である地価調査の価格を含みます)は実際の取引をもとに決定され、実勢価格に近いため、ここでは説明を省略します。
1.実勢価格
一般市場で形成されている不動産の相場をいいます。一般市場における売買価格は、売主と買主の自由な取引により決められます。通常、売主はより高い金額、買主はより安い金額で取引を行いたいため、双方が歩み寄った価格で取引が成立し、こうした取引の積み重ねにより取引相場が形成されていきます。我々不動産鑑定士が求める評価額も基本的にこの価格です。
2.相続税評価額
相続・贈与時の課税のもとになる評価額です。国税庁の「財産評価基準通達」により評価が行われます。これによると土地は相続税路線価、建物は固定資産税評価額が基準となります。また、路線価がない地域の土地評価は、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じた額が基準となります。なお、なお、相続税評価において、土地は実勢価格の概ね8割で評価されます。建物が賃貸の場合、建物は通常の3割減、土地も一定の減額が行われます。
3.固定資産税評価額
毎年課税される固定資産税のもとになる評価額です。総務省の「固定資産評価基準」により評価が行われます。市街地内の土地は固定資産税路線価、それ以外の区域では、各地域に設定された標準地の価格が基準となります。なお、固定資産評価において、土地は実勢価格の概ね7割で評価されます。建物新築時の評価額は、木造なら実際にかかった建築費の5~6割、鉄筋コンクリートなら7~8割が一般的です。
4.まとめ
このように、不動産の価格(評価)は様々な目的によって異なるため、いつ、どの形態で所有権を移転するかにより、納める税金の額は大きく異なり、注意が必要です。また、実はこのことがあるため、不動産を使った様々な節税対策が可能となるのです。次回からはこの点についてお話しします。
(こちらの内容はOITA CITY PRESS 2019年6月号に掲載されています)
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