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不動産投資は出口戦略が大事

2020年3月2日

今回は不動産の投資について考えてみたいと思います。不動産投資については、広告等ではやたらと利回りが強調されます。しかも実質利回りではなく、表面利回り(年間収入を投資額で割った数値で、経費については考慮されてない)が強調されがちです。しかし、不動産は、家賃を得た後、いくらで売れるかがとても大事であるにも関わらず、なぜかそこの議論はおざなりになっています。

昨年、金融庁が発表して社会問題となった2,000万円問題のこともあり、若い人でも不動産投資について興味を持っている方は多いのではないかと思います。そこで、今回は地方都市のファミリータイプのマンションへの投資について考えてみたいと思います。

なお、新築マンションは、価格が2倍以上にするにも関わらず、家賃は1.2倍~1.3倍程度にとどまる場合が多く投資効率が悪いため、ワンルームマンションは地方都市では投資リスクが高いためここでは考慮しません。

① 投資対象マンションのイメージ

地方都市の中心市街地に存する築後15年~20年程度の3LDKの中古マンションで、購入価格は1,800万円、家賃は月12万円、ランニングコスト(マンションの管理費・修繕積立金、固定資産税、不動産業者に支払う管理料の合計)は月平均3.5万円とします。したがって、月々の手取りは12万円-3.5万円=8.5万円となります。

10年間保有して、500万円落ちの1,300万円で売却した場合を想定します。この場合の実質投資額は差し引き500万円ですが、マンションを所有するには、その他にも経費がかかります。まず、不動産を買ったり売ったりした場合、仲介手数料や税金がかかります。この費用が購入時に6%、売却時に3%かかるとすると、1,800万円×6%+1,300万円×3%=147万円となります。

さらに、10年間のうち1度、賃借人の変更があると仮定し、その際の改装費が50万円、空室期間が6ヶ月だとすると、50万円+12万円×6ヶ月=122万円手取りが減ります。したがって、10年間の実質手取りは、8.5万円×12ヶ月×10年-500万円-147万円-122万円=251万円です。

仮に10年後、1,000万円でしかこのマンションが売れなかった場合、実質手取りはマイナスになってしまいます。

また、上記シミュレーションはマンションの購入価格・売却価格、家賃の額、空室状況、改装費等により大きく上下します。仮に家賃が月10万円しか取れない場合、1,300万円で売れたとしても実質的手取りは、(10万円-3.5万円)×12ヶ月×10年-500万円-147万円-50万円-10万円×6ヶ月=23万にしかなりません。

②まとめ

不動産投資は、上記シミュレーションでわかるとおり、様々な要素の組み合わせにより収益性が決定されます。また、1つの要素が目論見と異なっただけで収益性は大きく変動します。その中でも出口戦略は極めて重要です。もし、一定期間以上投資不動産を所有して、高く売れるチャンスがあれば(例えば空き家になったタイミングで高く買ってくれる人が見つかった場合等)、逃さず売却し、他の不動産等に再投資すべきです。

(こちらとほぼ同様の内容はOITA CITY PRESS 2020年3月号に掲載されています)

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