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家族信託という選択(2)

2020年6月2日

1.信託の意味と登場人物

「信託」とは、「自分の大切な財産を信頼できる人に託し、自分が決めた目的に沿って大切な人や自分のために管理・運用等をしてもらう」制度です。

信託には、委託者、受託者、受益者という3人が登場します。

委託者は「財産を託す人」です。

受託者は「託された財産を管理・運用・処分する人」です。受託者が行うことができる範囲は信託契約の内容によって決まります。例えば、管理・運用はできるが処分はできないとする信託契約や処分を行う場合は、委託者の同意を得る必要があるとする信託契約の締結も有効です。

受益者は「託された財産の権利を有する人(信託により管理、運用、処分等の利益を得る人)」です。

 

2.信託のしくみ

委託者が財産を受託者に預け(財産の名義上の所有者は受託者に移ります)、受託者は受益者のために財産の管理・運用・処分等を行います。したがって、信託のメインプレイヤーは受託者です。それに引き換え委託者は、いままで自分が行っていたことを受託者に任せるため信託契約を締結した後は、抜け殻的存在になります。

また、委託者と受益者が同一の場合を自益信託、別人の場合を他益信託といいます。自益信託(委託者=受益者)の場合、実質的に利益を受ける人に変更がないため、信託により不動産等の所有名義が受託者に移転しても贈与税、所得税、不動産取得税等はかかりません(登録免許税はかかります)。したがって、家族信託の場合、税負担が少ない自益信託を利用することが多くなります。

類似した制度である生命保険契約と比べてみると信託は理解しやすいのではないかと思います。生命保険契約では、契約者(信託の委託者)は保険料を保険会社(信託の受託者)に支払い、お金の名義は保険会社に移転します。保険会社はそのお金を元手に株式・債券・不動産等に投資をしてお金を増やし、保険契約で定められたお金の支払い事由が発生したときは保険契約で定められた受取人(信託の受益者)に保険金を支払います。

 

(こちらとほぼ同様の内容はOITA CITY PRESS 2020年6月号に掲載されています)

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