貸した建物は、なかなか戻ってこない
2021年7月10日
1,一度貸した建物はなかなか戻ってこない
一般的な建物賃貸借契約(これを普通借家契約という)により、建物を第三者に貸した場合、借主から賃貸借契約の解約申入れが無い限り、原則として建物を半永久的に貸さなくてはならなくなります(もちろん、貸主と借主の合意により賃貸借契約を終了させることは可能です)。これは、賃貸借契約の契約期間が既に満了していても同じです。なぜなら、建物の賃貸借では、借主の権利保護に主眼を置く借地借家法が適用され、契約期間が満了していても貸主側からの解約申入れには正当事由が必要となるからです。判例によると、この正当事由は、ほとんど認められることがありません(立退料を借主に支払ったとしてもです)。その結果、契約は自動的に更新され、建物を半永久的に貸さなければならなくなるわけです。
2,定期借家契約の活用
上記の問題は「定期借家契約」を締結することにより解決できます。「普通借家契約」と「定期借家契約」の違いは更新の有無にあります。「定期借家契約」には更新がありません。つまり、契約期間が満了すると、借主は貸主に建物を返還しなければならなくなります。この場合、貸主から借主に対する立退料の支払いも不要です。
例えば、①期間が明らかな海外赴任や転勤をしなければならない、②何年か後に新しい建物に建替えたい、③何年か後に更地化して土地を売却したい等、一時的に建物を貸して有効活用をはかりたい場合、「定期借家契約」は極めて有効な手段となります。
(こちらとほぼ同様の内容はOITA CITY PRESS 2021年7月号に掲載されています)
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